今年3月、名古屋入管の収容施設で亡くなったスリランカ人女性ウィシ
ュマさんの死をめぐり、真相解明を強く求める世論と野党の国会論戦が
政府にゆさぶりをかけています。
そうしたなかで、与党は入管の権限をさらに拡大する入管法改定案を今
国会に提案、採決強行のかまえでしたが、18日、改定案をついに取り
下げました。世論が押しあげた画期的な1歩です。

18日の速報ニュース
亡くなったウィシュマさんは、収容中に体調不良を訴え、医師からも治
療のための「仮放免」を施設に勧めていたにも関わらず、施設側が意図
的に無視し報告書にも一切記載せず、事実隠ぺいが強く疑われています。
また、収容中のウィシュマさんの様子を収めたビデオが有力な証拠とし
て、遺族や支援団体、野党が公開を要求していますが、政府は頑なに拒
んでいます。よほど視られたくないのでしょうか?
しかし、それは通用しないでしょう。
16日には、ウィシュマさんの葬儀が名古屋市内で行われ、遺族の方た
ちは「姉が大好きだった国でこんなことになり耐えられない。このこと
で誰も責任とっていない。ほかの外国人にこんなこと起きてほしくない」
と訴えました。
日本共産党の藤野やすふみ、本村伸子両衆院議員、山添拓参院議員、立
憲民主党の国会議員が葬儀に参列しました。

ウィシュマさんの遺影と共に名古屋入管に足を運ぶ遺族
このブログでお伝えしていますが、日本の入管行政は「全件収容」「無期
限拘束」など、その非人道的なあり方が国際的にも批判され、是正を求め
られてきました。
今回の改定案は、入管の権限を一層強化し、刑事罰化により強制退去を拡
大させるなど、さらなる改悪に強い批判が広がりました。
私は入管収容者への面会支援のボランティアに取り組んでいる知人をきっ
かけに、入管の問題に遅ればせながら関心を持ち始めました。
2019年当時、茨城県牛久(うしく)市の東日本入管で長期収容に抗議する
100人規模のハンガーストライキや、長崎県の大村入管ではストライキの
末収容者が餓死する事件が起こり、施設収容の異常な実態が暴露され、注
目が高まった頃でした。
入管問題に詳しい報道関係者によると、1997年以降の法務省発表で、ウィ
シュマさん以前に19人の収容者が死亡し、死因は主に収容に耐えかねて自
殺を図る場合か、入管の医療放置による死亡事故と指摘しています。私は
大変ショックを覚えました。日本の入管の歴史は、戦前の内務省から特高
警察の管轄にさかのぼり、外国人の人権は認めず、全員が取り締まりの対
象とする「全件収容主義」を一貫し、日本国憲法施行後もこの体質は変わ
らず、司法もおよばない「ブラックボックス」とされてきました。
私はこの根深い国家の体質が、社会にレイシズムや排外主義を生み出す温床
になってきたと思えてなりません。
本当の多文化共生のためにも、入管法の抜本的な改正こそ必要です。